シャングリラのウィキです

「何かになりてえ、って思ったことはないかい? 
生きる目標……夢って奴をあんたは抱えたことあるかって訊いてンだよ。 
こう生きて、こう死ぬ。オレは決めたぜ。あんたはどうだ? 
それとも、あんたも。あんたも所詮、この国に吐いて捨てる程いる半端者と一緒なのか……?」 


「分かってねえなァ。強さってのは手段じゃねえ、目的なんだ。国の為だの未来のためだの、道具として見てる奴が多いけどよ。
    ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・
  ――強えもんに憧れねェ男なんて、男じゃねえ。

 焦がれてンだよ、『強さ』って奴に。
 目指してンだよ、『最強』って奴を。
 その為なら何を斬り、誰を騙したって構わねェってぐらいにはなァ……!」
 
「オレはあの男よりつええ男を見たことがねえ。あんな変態野郎、初めて見た。
 あいつが、あいつだけがオレを『本物』にしてくれるはずだったんだよ、今更逃がすわきゃあねえだろ?
 ……自分自身の影からは、逃げられねえもんだぜ、ベルカイィン……。そんな手に成っちまっても、テメェはまだ血の重みを感じてんだろ?」
 
「邪魔だぜ端役モブ、半端者がしゃしゃり出てくるんじゃねェよ。あーもういいや、死んどけよテメェ」

「ハ、ハ、ハッ!
 ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァーーーッッ!!!
 そうかい、そうかよ! そんなにオレのことを殺したかったのか! そんなにオレのために力を磨いてきやがったのか!
 こりゃいいぜ、最高だ! テメェそこまで言うんなら相当の覚悟積んできたんだろうなァ、ええ!?
 てめえみてぇな野郎がいるから、村を焼くのはやめられねェんだ! 人を殺すのはやめられねェんだ!
 愛してるぜェ! おまえの手で!
 オレを、本物オトコにしてくれやァ!!」

ルーシャス・チェイス/Lucius Chase

性別男性
年齢32歳
役職王族直属の親衛隊

性格

 飄々としてつかみどころのない雰囲気の男。
 一言で言って極まった刹那主義の個人主義。世界の在り様より、個人の生き様をこそ重視する今風の思考を持つ男。
 生まれついての才覚と広い視野を持つが故に、決して周りが見えない愚か者ではなく、その故に社交性が全くない訳ではない。異常性をしっかりと理解した上で、それに立ち向かうことを良しとする。
 その行いが悪であれ、善であれ、自分の本懐を遂げる事を最優先に考えている。

 いわゆる戦闘狂の一種であり、生死を賭けた戦いであれ一方的な片殺しであれ等しく貴ぶ殺人鬼。
 人生を掛けて積み上げてきたものがぶつかり合い、いずれかが屑のように散っていく、その痛快さを彼は心から愛している。
 それは人が懸命に鍛え、或いは誇ってきたものを壊すという行為を通じることで、『強さ』は得られるという彼個人の哲学に由来する。
 
 彼の内側には、途方もなく強い『強くなりたい』という向上欲と、強いものへの憧憬に満ちている。多くの人間が『大人になる』と言って蓋をしてきた、理想を求める心を、彼は強く抱いている。
 王国の多くの人間が潜在的に持っている『現状維持』『安寧が欲しい』という発想とは真逆の渇望を抱き、魂を揺さぶるほどの刺激を求めてやまない。
 何者にもなれない自分が嫌で仕方がない。理想に殉じることができないなら、そもそも生きていたくもない。そんな破滅じみた強烈な妄念によって、彼は突き動かされている。

 その反面、自分の『憧れ』の為ならば平然と他者を踏み台にし、自分自身が壊れていくことさえ厭わない。
 自身の理想に狂信的であり、一瞬であれ最強となることに焦がれている。
 その狂信がある故に、己の信念を貫けない者、言い訳を広げて自分を正当化する者に対しては身分の違いすら問わずして『半端者』『乱造品』と揶揄することもある。飼われているばかりで何もしない一般市民を平然と虐殺できるのは、この侮蔑が腹の底にあるからとも。
 しかし前述した『強さ』の信仰から、彼の好みに合う人間は多くの場合彼の標的となることが多い。愛するが故に壊し、憎む故に無関心。
 
 彼がここまで幻想に向かい走り続けているのは、現実はいつもそうはいかないことを、痛感しているが故だ。
 そして叶わぬと知っているからこそ、彼は自戒していた。しかし、ただ一つ……ただ一人、その法則を抜け出た男がいたが故に、彼は現実を振り切り走り出す男となってしまった。

容姿

 身長185cm、軽薄な印象と裏腹に引き締まった筋肉を持つ、北方由来の白い肌の青年。
 三十になるが、やや童顔気味の若々しい顔つきをしており肉体の衰えを感じさせない。
 翠の瞳と、鎌剣(ショーテル)の入れ墨が特徴的。
 
 服装はファーのついた黒のロングコートと黒のニット帽を好んで着用する。祈祷用の銀の十字架のブレスレットをつけているが、別段信仰深いという訳ではない。殺す際に敬意を表した相手の身に着けたものを持ち歩く癖があり、これもその一つ。
 特に戦闘時には裸の上に生でコートを着ていることも多く、自身の体つきに自信を持っている様子。
 ブーツには氷上での軌道で利用するため、ウェスタンの拍車を思わせるピックがついている。

天恵

無慙MortalSin 』
 殺意の物質化。
 殺すという念、死ねという命令、それらが物理的に形を成し衝撃を与える異能。簡単に言えば害意をトリガーに発動する念動力のようなもの。
 物質化の際には『氷柱』や『冷気』といった、氷結系の『死』のイメージが具現化し、実質的には氷結能力に近い。これは単純な冷気ではない一種の精神エネルギーの具現化としての冷気なため、水分がなくとも発動し、且つ自身に対しての影響を調整できる。一度凍結した物体を、『解除』することで氷結した物体を瞬時に解かすことも可能。
 この殺気の物質化は同時に相手から向けられる殺意といったものに対しても機能し、浴びせられる殺気の多寡によって奇襲を未然に感知、またフェイントに混ぜた本命の殺し手を的確に見切るなどの対応が可能となる。
 
 ただの凡人ならば念じるだけで殺せ、また範囲攻撃も可能な点から大人数に対する特効性が強い粛正向けの天恵。
 かつては単純に殺傷能力として扱い、『念』を飛ばすことによる一方的な殺戮を是としていたが、夢に目覚めて以降は様々な場面を想定して氷結能力を操作できるようになる。
 彼は修練を積むことで殺意により自身の体躯を強化、また装甲のように身に纏うことで疑似的な障壁として展開することも可能となった。
 そしてこの能力は、彼自身の強い熱情が加速すればしただけ凶悪になっていく。
 無慙――即ち犯した悪逆を振り返らず突き進む、妄念という罪を負うごとに切れ味が増していく殺戮の刃。

神器

装備

 ミスリルで鍛えられた、護手の付いた二振りのツイン・ショーテル。
 家に伝わる名刀というが当人は頑丈でよく切れる包丁程度の認識で、戦闘時の扱いは雑。

備考

一人称は<オレ>、二人称は<テメェ><アンタ>
 王族付きの親衛隊の一人であり、現在はベルカイン・グレイハーツに代わって粛正の主導者となっている。ベルカインが離れて以降、さらに粛正が過激化した元凶でもある、殺戮を楽しみ殺し合いを貴ぶ正真正銘の殺人鬼。通り名は『凶剣』。

 王族付きの親衛隊という職務を持つものの、本人はその地位を何とも思っていない様子で、最低限の仕事をこなすにとどめている様子だが、決して気にかけていないという訳でもない。
 天賦の才を持って生まれた剣術の達人であると同時に、強力な天恵によって裏打ちされた力の持ち主。血筋や出世ルートに乗った訳でもなく、そもそも目指してすらいなかったにも拘らず、純粋な戦闘力で成り上がった、一種の戦闘の天才でもある。
 

 己は生まれてくる時代を間違えた――彼は、そう感じていた。
 元々武術家を輩出し、多くの天恵持ちを王国に差し出した功績から一定の地位を得ていた東方の家柄の人間であり、武芸の才と優れた天恵を生まれついて有していたことから親衛隊ではめきめきと頭角を現し、十代で王族付きという親衛隊の中で最高の栄誉に輝くに至った。
 そんな庶子の身で臨める最大のエリートとして大成していたものの、その内面はひたすら醒めており、十八の頃までは無気力な人間であった。
 天賦の才と優れた天恵を有しながら、それを使う機会にも恵まれず、鍛える事もせず、ただ粛々と王族警護のための職務を続けていたからだ。
 
 生まれついて戦闘に特化した天恵を持って生まれ、その天賦の才能のみで王族付きの親衛隊員になり上がった彼は、しかし何の充実感も抱いていなかった。
 戦うために生まれてきたはずのこの力に夢見たこともあった。
 殺すために積み上げられてきた筈のこの技を、誇ったこともあった。
 しかし反逆軍などという脆弱な組織や、『神』とやらから神器を賜った者達が出てきたところで、それを振るう機会はほとんどない。
 この圧倒的軍事力を誇る大国の王族など、基本的に誰も襲わない。他国の人間ならばいざ知らず、ここは鎖国された国……王族付きとは要するに飼い殺しと相違なく、少なくとも彼はそう思っていた。
 いかな神器を得た反逆軍とて、王族の如きやんごとなき身に迫ることはこの十数年の間に皆無。人の戦士としての絶頂期たる2,30代という年齢を、ただ浮も沈みもしない王族警護という職務に就くことは、緩やかにルーシャスの心を殺していった。
 自らそこを辞したところで、待っているのは粛清任務のみ。単に反逆者を殺すだけならば、兵器による蹂躙で事足りる。
 そして科学力の進歩と共に、個人の力は希薄化される。鍛えたところで何の意味があるのか?
 既にこのような力に何の意味があるのか、甚だ疑問で仕方がなかったのだ。

 だが……そうした中で、彼に確変が起きるのは、或る男との出会いがきっかけだった。
 ベルカイン・グレイハーツ。粛清人と呼ばれた男の生き様は、彼に衝撃を与えた。
 素手で以て粛清の現場に赴き、片端から素手で仕留め、殺し尽くす。
 彼の在り様は俗世の価値など顧みず、技を極めるためだけに殺戮すら厭わない生来の『武人』、ルーシャスの眼にはそう映った。
 技の粋を極め、純粋に殺人技巧を高め、入神の域に達した技の冴え。
 一殺に情など持たず、ただ如何にして効率的に、如何にして能率的に、『最も多くの命を刈り取る』拳を追求する。

 そのストイックなまでの修羅の在り様に、ルーシャスは己を恥じた。
 確かに自分はこの世界の虚しさに嫌気が差していた。しかし、それを全力で打ち破る努力をしたか?
 社会的に不要だとか、価値がない、だとか、そのようなものの一切が只の言い訳だと、ルーシャスは感じ入った。
 必要とされぬ、などと笑止千万。
 見るがいい――武の在り様とは、まさにこれ。
 そこには、もはや見世物に堕した武の在り方など何処にもない。純粋に、ひたすら執念深く、積み上げてきた殺しの技。無駄をそぎ落とし、研ぎ澄まされた機能美。それは、もはや他の虐殺手段の立ち入る余地もない程に効率化され、実績を上げてきたのだ。
 殺しのための技、殺しのための力。これこそが技の求める境地に他ならない!


 彼はそこに夢を見た。
 この世で、誰も必要としない技を以て天を目指すその在り様。
 この世の現実の虚しさを物ともせず、自らの理想を突き詰め続ける姿。
 その在り様その生き様、まさしく己の求めた存在に相違ない。
 誰もが自らの本懐を遂げられない、このくだらない世の中に、たとえ幻でも唯一の『本物』を視たのだ。
 
 ルーシャスは、その男の背を目指した。
 諦めていた『最強』の夢に、火が着いた。
 願いはただ一つ『強くなりたい』。
 この生まれ持って得た力と、この技を使い、誰にも負けない漢に成りたい。
 天恵が神の授かりものだというのならば、その意味は必ずある筈。一番を目指す切符を、己は持っている筈なのだ。
 完璧、最強、無敵、絶対。そんな、少年時代に置いて捨てるような馬鹿げた夢が、力へのあこがれが、再燃する。
 そんな少年じみた夢は程なくして爆発する。この二十年燻り続けていたエネルギーが、己自身をすら燃やす程に彼の内側で炸裂した。
 
 以降、彼は精力的に粛清に参加した。これまでの無気力な態度が嘘のように、活気に満ちた姿で戦場にはせ参じた。
 得物や素手での殺害を好み、相手の悲鳴や怒りの怒号を直に耳にして、戦場の現実を知った彼は一層充実感に震えた。
 相手の命を奪う高揚感、逆に命を奪われる緊迫感、数え切れぬ戦果と負傷は、才能に甘えた凡人を狂気の鬼才へと変えていった。
 理屈の上で強くなっても、実戦を摘むことで得られる強さや快感を覚えた彼は、更に進んで粛正に参加した。
 直接手で殺すことの衝撃は、更に彼に『強さ』の信仰に磨きをかけていく。
 狂笑と共に戦場を駆け、必要以上の暴力で村々を破壊し尽くす殺戮の悪魔。嬉々として戦場を駆け、数多の叛逆者を手ずから葬ったその所業から、何時しか彼は『凶剣』の名を以て知られるようになる。
 
 そして来る日が来る。自らが十分な『強さ』を得、偶然に監視の目が絶たれ、邪魔者が誰も居なくなった粛正現場の村の中で。
 粛清の終了したところを見計らい、彼はベルカインと交戦する。
 狂気を曝け出しながら彼に襲い掛かり、鍛え抜いた力を叩きつけたルーシャスは……しかし当人からすればあまりに呆気なく、ベルカインを叩きのめした。叩きのめしてしまった。
 戦いを制したルーシャスだが、『殺気』を操ることによる天恵を有する関係から、相手に終始こちらへむけての殺意が十分にないことを悟った。
 何だその腑抜けは。何だ、その様は。何故鍛え抜いた四肢を刻まれて、そのようにへらへらとしている……!
 あくまでルーシャスが戦いたかったのは、あの絶え間ない粛正によって限界に磨き上げられた『最強』の体現者であり、『報いを受ける』などという手前勝手な理屈で抗うことを放棄した人間などではない。このような決着に納得がいくはずがない。
 
 ルーシャスは考えた。この男は、戦うことに理由を付けねばならない類の人間なのではないか。
 王族に対する使命感と、自ら体現する武のために人生を捧ぐ、こいつはそうした男だった筈だ。
 それを最低限尊重するというのならば、別のやり方がある筈だ。

 憎しみが持つ力を、ルーシャスはよく知っていた。数多の村を焼き、謀反者を断罪し続けたルーシャスは、その原動力の多くが『復讐』『憎悪』にあると知っていた。彼らはその強い目的意識の故に、不退転の強さを得るのだ、と。
 ならば……己は、それになればよいのではないか。
 大切なものを与え、そして奪う。護るべきものを作り、それを切り捨て、奴にとっての最大の敵となることが出来たなら……その時こそ最強の粛正者、ベルカインが復活する日が来るではないか。
 
 故に彼は徹底的に痛めつけたベルカインを搬送して治療を受けさせ、先ずは『二度と同じように拳が震えない』ことの挫折感によって親衛隊を辞めさせようと試みる。
 親衛隊を辞め、その力を振るうために反逆軍に入るだろうことを、ルーシャスは確信していた。その中で、きっと彼は新たな関係を結ぶことだろう。
 熟れるのは、その時だ。震えるほどの怒りと憎しみを以て、彼にとっての戦う理由を作り出し、最高の舞台で奴と死合う。親衛隊も反逆軍も、このくだらない国すべて。すべてそれのために利用して、彼は己の夢へと駆け始める。
 
 最強の粛清者ベルカイン・グレイハーツとの決着のために――。


 イメージCVは堀川忍、イメージカラーはクリムゾンレッド。

人間関係

 最強の男.
 

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