シャングリラのウィキです





「力なき友よ、君を苦しませはしない。その人生に敬意を。我が拳を以て幕引きとしよう」

「……すまない、話すのはどうにも苦手で。あまり人と関わらないように生きてきたんだ。後悔はあるが、それで良かったのだとも思う。僕が去ったあとに、残した人々が傷つけられるようなことがあってはいけないからね」

「あの貴き人を見たとき、誰に言われるでもなく理解した。僕はあの方々を守るために生まれてきたのだと。その想いは今でも本物だ。だけど……うん、こればかりは仕方ない。すべての人が斯くあるべきと信ずる人生を送れるわけではないんだよ」

「僕は戦場では死ねない……死ぬわけには、いかない。そんな名誉は与えられるべきじゃない。でなければ、死にたくないと願った何百の命に報いることなど出来ない……!」

ベルカイン・グレイハーツ

性別男性
年齢不詳/三十代
役職誰の直属でもない親衛隊→反逆軍

性格

 忠義に篤く、正道を好しとする武人。王族を「貴き人」と仰ぐ一方で、現体制への疑念を長年燻らせていた。穏やかな人柄だが優柔不断すぎるきらいがある。口下手で誠実、やや黴臭い価値観。
 怒りを表出することが不得手で、激憤するよりも悲嘆に暮れる在り方。本質は激情家だが、疑念や義憤を抑圧して生きてきたため拗れてしまっている。外向的な気質ながら、ある事情から他人とは距離を置いて生きてきた。涙脆い男だったが、頭部を機械化してからは流す涙を失っている。

容姿

 胴を除くほとんどの生体部分を機械に置換している。頭部パーツはつるりとしたヘルメットのような形状で、目鼻がなく、感情を汲みとることは難しい。これには視線を読ませないという狙いもある。視聴覚は常人と比べ強化されているがジャミングに弱い。また、頭部の機能は脳の保護と各部駆動のラグを限界まで抑えることが要であり、それ以上のものはない。首は超弾性繊維の束が複雑に絡みあい、胸鎖乳突筋のようなラインを作っている。
 機械化された手足には生身の印象が残っておらず、角ばったデザイン。関節の可動域は人体よりも広い。また、跳躍力を強化するために脚部は逆関節のパーツを使用している。カラーリングは濃いマットグレー。非生体部分が稼働するとき、赤みの強いオレンジのライトが点灯する。身長は2メートル強。

天恵

「ドーン・ウォード」
 端的に表現するならば、防御系の天啓。
 あらゆる干渉を遮断する防壁「ヘキサグラフ」を張る。
 ただし絶対防御の壁を出現させる――といった類ではなく、複数の防壁を重ねて展開し「攻撃を着弾させる(効果を受ける)」ことで防ぐ。シールドというよりはデコイのほうが近い。
 干渉力ないし破壊力が高いほど消費する防壁も多く、必要数を見誤れば効果を受けるか必要以上の消耗を強いられるピーキーな性能。
 使い方によっては一時的な足場にもなるが荷重許容量はそう大きくはない。
 防壁の形状は六角形。サイズは最大15センチで、小さくする分には下限がない(ただし肉眼で認識できる範囲)。広範囲に及ぶ攻撃には同じく多方面に展開する必要があり、当然消耗も激しい。
 対物理よりも、索敵の妨害で真価を発揮する。敵に探られていることを感知しながら、自身の存在を検出されないというアドバンテージを得られるため。
 また、一度展開した防壁は「役割を果たすまで」消えることはない。

装備

強化装腕アーマード・パンチャー
 殴打に特化した義腕。手の甲から肘にかけて添え木のように伸びる太いパイプはブースターになっており、一撃に爆発的な推進力を加えるための機構。パンチギミック発動には「ショット」と呼ばれる使い切りの燃料を消費し、ベルカインはこれを5本携行している。
 かつて彼が会得した「正確に人体を破壊する」技術は、ベルカインが生身を激しく損傷して以来失われている。繊細な動作が困難になったのを、義手を戦闘特化したものに置き換え、破壊力を底上げすることで補っている。

強化装脚アーマード・ジャンパー
 跳躍に特化した義足。膝関節が通常とは逆方向に曲がった、いわゆる逆関節。跳躍力と旋回力に優れる反面、前後からの衝撃に弱い。そのため正面きっての肉弾戦よりも頭上からの落下攻撃や、機動力を活かした戦闘スタイル。
 そのままでも数メートル程度なら軽々と飛び越えられるが、強化装腕と同様に高濃度燃料「ショット」を消費することで、爆発的な跳躍力を得る。

備考

 一人称「僕」、二人称「君」。
成人男性の声を再現した電子音声で喋る。起伏のない静かな語り口。子供と話すときは自然とあやすような物言いに、女性と話すときは一歩引いた距離感と尊重する言動になるが、彼に妻子がいたという記録はない。

 辺境の村に生まれ、ごく当然のように国へ捧げられた。天恵を持って生まれた者の多くが通る道を、同じように辿った半生。やがて親衛隊入りを果たした彼は、初めて王城へ踏み入った日に運命と出会った。
 ザーバスノットの血統。遠目にも気高さを帯びた風貌。王族をひと目見た瞬間、あの貴き方々を守るために己は生まれたのだとベルカインは確信した。
だが、彼の才覚が日の目を見ることはなかった。

 国家の剣たるべく鍛えられたはずの彼に与えられた任務は、貧しい村々に対する粛清だった。国に叛く逆賊だと自身に言い聞かせながらも、疑念は増すばかりだった。これが正道なのか。無辜の人々から家も糧も奪うことが/我が子を庇う親の背を貫くことが/妻を逃すべく震える手で武器を握る男を斬り捨てることが。人としての尊厳さえ彼らは望めない。
 現体制への疑念、親衛隊という組織の歪みは彼の刃を鈍らせ、やがて剣を執ることを放棄させた。拳を武器にするようになったのは、忘れないためだ。痛みと嘆きを己にも刻むよう、そしてなるべく苦しませないよう一撃で「終わらせる」技術を学んだ。

 貴き人を守ると誓った彼は、いつしか弱者を狩ることに卓越していた。
 そういう趣味なのだと謗る者もいたが、あえて正そうとはしなかった。ベルカインが粛清任務に積極的に志願していたのは事実だからだ。
 弄ばれる命を少しでも減らせるように。そして、要らぬ苦痛を取り除けるように。皮肉なことに、彼が民草を思えば思うほど、その手は彼らの血に濡れるばかりだった。

 自覚はとうの昔からあった。それは温情ではない。真に人々を思うならば、拳を振りかざすのではなく、手を差し伸べるべきだった。
 義憤と疑念は尽きず、しかし国家の剣たる己を捨てることもできない。たとえ鈍らだとしても、あの貴き方々に叛くことなど出来ようはずがなかった。

 かくして彼は善性と義心を持ったまま、殺戮者と成り果てた。聖女処刑から活動を盛んにする反逆軍によって命を落としかけても、屍の山と血の河を築き続けた。

 何も変わらないように思えた日々は、しかし次第に変化していた。肉体の殆どを機械に置換することで生き永らえ、また無辜の命を奪う。殴った拳に痛みはなく、鏡に映る己はもはや人ならざる者だった。

 このままでは心までも怪物になると危惧した彼は、長年の迷いを遂に振り払うことを決めた。――国家の剣はここに折れた。償えない罪を抱えたまま、彼は尊厳なき命を真に救うために拳を振るうことを選んだ。

 肉体を機械化する以前は黒髪と深緑の瞳をした精悍な男性だった。いつしか剣を執ることを厭い、拳を武器とするようになってから怪我は絶えず、再生医療の世話になることも頻繁だったという。機械化してから半年ほどしか経っておらず、多くの人にとっては以前の姿のほうが馴染み深い。
 また、臓器の一部を機械に換装してからは、栄養効率が増したという。食費が浮いて助かるとは本人の言だが、健啖家だった彼がもう温かな料理を味わうことはできない。味覚は失われ、いま彼を生かしているのは静脈摂取の栄養剤である。

 何かと理由をつけては粛清に参与したベルカインは、いつしか他の親衛隊と疎遠になっていた。彼の真意を悟った者がどれほどいたかは分からない。軽蔑と忌避に晒され、異常者の誹りを受けても、さもあらんと受容していた。

 「粛清者ベルカイン」――その名は、反逆軍と人々にこそ広く知られる。多くの村を焼き落とし、無数の頸を潰し、幾度となく反逆軍と敵対した男の名は時に畏怖とともに語られる。
 ただし反逆軍の一人に完膚なきまでに打ち負かされてから、その姿を見た者はいない。死んだとも生き延びたが廃人化したとも囁かれ、鋼鉄頭の男が後継者だという噂もあった。
 あまりの変わりように本人と認識されなかっただけで、ベルカイン本人は身体の一部を機械に置き換えながらも、元気に現場復帰していた……というのが事の真相。

 なお、「鋼鉄頭の男」として任務に出てたのはたったの一度。「人の命を奪う痛みと重み」を実感できなかったことで、遂に心が折れてしまった。そのためベルカインはメラ村の粛清には関与していないが、知人の伝手を頼って報告書を閲覧している。

 若い頃のあだ名は「ベルさん」。落ち着いた態度とちょっと老け顔なところから、親しみと尊敬をこめてそう呼ばれていた。

 元々は上流階級の貴族に仕えていた(募集項目/粛清者となるにあたって、主人の評判を落とさないため自ら解任を望んだ――という想定です。ベルカインは自ら「無辜の命が弄ばれないよう、せめて苦しみの少ない方法で葬ってやりたい」という真意を明かさないので、誤解や行き違いから解任される運びとなった、というケースも面白いかな〜と思いました)

 万が一に備え、家庭を持たずに生きてきた。その反動から「家族」というものに強い憧憬を抱いており、脳内に空想上の妻子を住ませているという、ちょっとアレな面がある。

 付き合いの長い人物に趣味を訊ねられ、空想癖をカミングアウトしたことがある。のちに「最近家族とはどう?」と聞かれ、ファミリー映画を見たり玩具のカタログを取り寄せたという話をしたところ、本気でカウンセリングを勧められた。
 それ以来、あまり他人に空想癖の話をしないようになった。一応おかしいという自覚はあり、空想に耽っていたら休暇が終わっていたという経験をしてからは自制に努めている。

 イメージカラーはガンメタル。

募集

 ベルカインが「貴き人」と仰ぐ王族(一名/ベルの一方的な認知でも可)
 粛清者としてのベルカインと交戦経験がある人物(何名でも/反逆軍、村焼き関係/フロリア・スィ・ラシュカ)
 数年前にベルカインを瀕死の重傷に追いやった人物(〆/ルーシャス・チェイス)
 ベルカインを気にかけていた人物(何名でも/親衛隊)

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

メンバーのみ編集できます