『──堅苦しい挨拶は抜きと行こう、この場に於いて我らの間にあるものは主従でも無ければ情でもなく利害だ。反逆軍諸君、よくぞ限られた戦力でこの陣営をここまで追い込んだと褒めてやりたい所だが、拍手喝采のスタンディングオーベーションを送りたい気持ちで山々だが、ここは退いた方が良い。……何故？よもや王族である私が何の策も無く、捨て駒である親衛隊共の為に自ら君たちの前に出て来たと思っているのならば、想像以上の浅はかさだな？既に諸君を屠るに充分な増援がこちらに向かっている……此処で殲滅するのも悪くはないが、これでも私も人の子だ。これ以上同胞の血が流れるのは見たくない。犠牲はあれど王国軍に打撃を与え、限られた残存戦力も保護出来る……悪くない話だと思うがね？』
『…………半分以上は賭けだったが案外私のネームバリューも捨てたものではないな、あんなハッタリが通用するだなんて思っても見なかった。……あー、オホン。……情けない、それでも王国の親衛隊かね？直属ではないとは言え王族である私を前線に立たせるなど諸君の立場からしてみればあってはならないと言う事くらい、いくら隊の下っ端でも理解出来ようものを。相手が相手なら懲罰房行きも検討すべき事であろうが、私はそんな非生産的な趣味は持ち合わせていないのでね……と、普段の私ならば言っていたであろうけれど？たまには趣向を変える事で見えて来るものもある！……ハハン？痛いかね？苦しいかね？怖ろしいかね？しかし耳を削がれて声を上げなかった事は褒めてあげよう。頑張った者には正当な評価を与える、私は何と心の広き存在なのだろう。諸君もそう思うだろう？……さて、同意も得られた事だしこれに懲りたら二度とこの様な失態を犯さぬよう、各々鍛錬に励むと良い。おっと、救護班は本当に呼んでいるから此処で暫し待っていたまえ。それでは。』
「敢えて問うてみたいのだけれど……君の爪先は、より良き未来へ向いていると言う確証があるかい？もしかすると其の先に道が無く、断崖絶壁の奈落が広がっているかも知れない。勝てるかどうかも分からない上に、現王政が瓦解した先に何が待っているのかも分からない。それでも君は、君達はこの王国に弓を引くと？……そうか、やはり君たちの決意は固いのだな……良かった。いやいや、素晴らしい。未来に確証なんてものを求める事ほど愚かな事はないと、私も思うよ。今日とは違う明日を求める勇気こそが、道なき荒野を切り拓く道標だ。最後までその心を失う事なく、どうかやり遂げて欲しい。」
「……生憎。これでも親族は大切に思うタチなんでね、此方も抵抗させて貰おうか。悪政蔓延る環境だったとは言え育ての親や兄弟姉妹、それに変わり者も多いが他の血縁の者達を簡単に切り捨てて、甘い蜜を啜っていた癖に自分だけ正義面するほど落ちぶれているつもりはない。もし亡国となるならばその運命と共に果てる事こそ私の宿命なのだと……ずっと考えて来た。そして君は、私の宿命を叶えるに足る存在だと感じていたよ。──さあ、運命を紡ごうか。」
ハロルド・ザーバスノット 
性別：男
年齢：25歳
役職：王族
性格
仮面をしているハロルド・ザーバスノットは平静でありながら口数は多く何処か演技掛かっていて、まるでとても滑らかな嘘の革を被せた様な独特な語り口調をしている。しかし口調に反して社交的、紳士的な態度を取って他者と接する事から上流階級や兵士、召使いの間でも比較的安心して接する事の出来る王族として認知されている。身近な相手や気に入った相手には砕けた口調や冗談、悪戯等を繰り出す事もあり、彼と関われば関わる程に歳不相応な一面が垣間見える。
だが王族としての立ち振る舞いは決して崩さず、処罰が必要と判断すれば冷徹に罰する。時に彼の脳内のみの会議を行ない、談笑しながらも唐突に他者を殺傷する等と言った奇行に走る事もある故に油断はならない。端から見れば彼の行動には一貫性が無くともしっかり彼の中での正当な理由があり、王族としてそうするべきだと言う結論に至りその行動に出たのだと、何とも至極真っ当な話であるかの如く宣う。
彼はある意味でとても純粋で、周囲の期待に応えたいと強く願う節がある。王族としての立ち振る舞いをして欲しいと言う期待。王族とはこういうものだと言う期待。その重圧と、悪政敷く現王国の血縁と言う立場と、王族に対する世間や周囲の負の認識が彼の心を蝕み、永い年月をかけて現在の彼を形成した。
一転、素顔のハロルド、もとい彼の解放された自我は非常に感受性豊かであり朗らかで繊細な浪漫主義者。善人であり、仮面時と違い他人への無慈悲な制裁などは進んで行なおうとはしない。だが身分を隠している癖に好奇心旺盛で色んな事に首を突っ込んでは厄介事を作ってしまう様な無邪気さを持つ。
仮面をしている時は王族として。素顔の時は一人の人間として。どちらも自分でどちらも違う。庶民と何の隔たりも格差も無い関係から新たに芽生えた自分と、王族としての自分のギャップから内面に歪みが生じてしまい、のっぴきならない嘘臭さが普段の彼から滲み出る様になっていた。そんな二重人格とも少し違う彼の表裏はあれど、根底には暴力をぶつけ合う様な争いを好まず、国民を愛する心が確かにある。だが現段階で彼が最も大切に思っているのは、他ならぬ自分の家族や同じ王族。だから彼は、大手を振って王国を裏切る事はしたくない。
故に彼は時に国民を助け、時に王国側として立ち、それでも決定打になる様な一手を自らが打つ事はしない。王国と民のどちらを選ぶ事も出来ず、それでも反逆者がこの国を滅亡させる事を密かに想い、そして腐敗した王国と運命を共にしてしまいたいと言う破滅的な結末を思い描いている。
容姿
素顔を常に黒を基調とした革生地製のペストマスクの様な仮面を着用して隠している。見た目こそペストマスクだが浄化機能は無く、嘴の様な突起は在る物の鼻から上が隠れているだけで下から覗けば口元程度は露出されており見る事が可能な造形。目元は無骨な金属製の縁にスモークガラスで出来た双眸。嘴には二本の縦ラインを描く様に刺繍が施されている。しかし服装は黒いペストマスクとは正反対で、つば広の白いシルクハットとタキシード。さらには左肩に銀色の獣毛をあしらった膝元辺りまで丈のあるマントを羽織る。首元には声を濁声に変えるチョーカー型変声機を着用。あまりにも異質な容貌だが着用している物はどれも王族と言う身分にそぐわぬ細やかな職人技が光る仕立て。民衆の前はおろか親族の前、陛下への謁見の時ですら仮面を取る事はしない為、その素顔については上流階級の間でも様々な憶測が飛び交う程に謎に包まれている。彼の姿を一言で表すならば「白い鴉」。189cmと言う長身は華奢なシルエットにも見えるが鍛えられた四肢を持つ。また、左腕はペストマスクにも引けを取らないスチームパンクを彷彿とさせる肘の辺りまである機械腕を装着しており、普通の腕よりもやや太め。指先は鋭い爪の様になっており、動かせば金属の軋む音が僅かに響く。しかしこれは機械腕ではあるが義手では無く、左腕に装着する形で装備された彼の攻防一体の護身兵器。とは言え周囲には義手であると公言している。また、もう一つの護身用として仕込み銃の杖を携帯している。
そんな彼の素顔は、年相応に若さを残しつつも青年として成熟し整った容姿をしているが、額中央から左目を経由した左頬まで大きな痣の様な痛々しい傷が走っている。肩まで伸びる少し癖のある銀髪を前髪ごと後ろへ流して雑に纏めて結んだメッシ―バン。瞳はエメラルドを思わせる深い翡翠色の二重瞼。肌は普段から過剰な程に着飾っている所為もあり日に晒され慣れていない白色をしている。彼の素顔が包むのは朗らかで柔い雰囲気で、およそ普段のペストマスクを被っている者と同一人物とは感じさせないだろう。庶民と交流を図る時は王族としての身分は隠し、仮面と機械腕を含む重苦しい装飾を全て外し、リネンの白シャツや茶色のホースレザーブーツなど、なるべくラフな服装を心がけている。それでも妙に小綺麗な物だから勘の良い人からは違和感を与えてしまうかも知れないが。
天恵
ア イ ギ ス
【 今なお在りし抑止の睥睨 】
彼の双眸で捉え瞬きをする事で写真のシャッターを切るかの如く、5秒だけ対象物の時間を停止させる能力。瞬きを繰り返せば秒数は加算されて行く。適応範囲は彼の視界分。対象は視る事が可能な非生物、かつ人間が直接触れていない物に限定されている（無色透明な気体などは勿論、着用している衣服や武器等は非生物でも対象外）。他者の天恵も対象外。それ以外なら流動体であれ何であれ、眼に見える物であれば時間を停止させる事が可能。停止中の物質は元の強度がどうであれ須く"停止した時間に固定された物"としての概念的な硬度となる為に護身に於いては非常に優秀。相当なパワーでなければ停止中の物を破壊する事は難しい。慣性の法則は時間停止解除後も生きたままとなる為、例えば弾丸を停めても解除されれば再び元の勢いのまま飛んで行く。しかし時間停止中にかけた圧力や衝撃は解除後に適応される仕組みとなる為、違うベクトルに衝撃を与える事で弾丸を解除後に別方向へ弾く事も可能。
能力を使い続ける事で負うデメリットはドライアイになる、眼が充血する、眼が霞むなど、視る事に対する眼精疲労の蓄積が溜まりやすい程度。左目の視力がほとんど失われている為、背後からの攻撃以外では彼の左側は割と死角でもある。普段は仮面を装着している事から彼の能力発動条件は不明とされているが、何度も戦闘を経験・観察していると視界に入れる事が第一条件であると言う事・左から来る物に対する反応速度が鈍い事は何となく察する事も出来るだろう。王族である彼が闘う機会がそう何度もあれば、の話ではあるけれど。
【 今なお在りし抑止の睥睨 】
彼の双眸で捉え瞬きをする事で写真のシャッターを切るかの如く、5秒だけ対象物の時間を停止させる能力。瞬きを繰り返せば秒数は加算されて行く。適応範囲は彼の視界分。対象は視る事が可能な非生物、かつ人間が直接触れていない物に限定されている（無色透明な気体などは勿論、着用している衣服や武器等は非生物でも対象外）。他者の天恵も対象外。それ以外なら流動体であれ何であれ、眼に見える物であれば時間を停止させる事が可能。停止中の物質は元の強度がどうであれ須く"停止した時間に固定された物"としての概念的な硬度となる為に護身に於いては非常に優秀。相当なパワーでなければ停止中の物を破壊する事は難しい。慣性の法則は時間停止解除後も生きたままとなる為、例えば弾丸を停めても解除されれば再び元の勢いのまま飛んで行く。しかし時間停止中にかけた圧力や衝撃は解除後に適応される仕組みとなる為、違うベクトルに衝撃を与える事で弾丸を解除後に別方向へ弾く事も可能。
能力を使い続ける事で負うデメリットはドライアイになる、眼が充血する、眼が霞むなど、視る事に対する眼精疲労の蓄積が溜まりやすい程度。左目の視力がほとんど失われている為、背後からの攻撃以外では彼の左側は割と死角でもある。普段は仮面を装着している事から彼の能力発動条件は不明とされているが、何度も戦闘を経験・観察していると視界に入れる事が第一条件であると言う事・左から来る物に対する反応速度が鈍い事は何となく察する事も出来るだろう。王族である彼が闘う機会がそう何度もあれば、の話ではあるけれど。
装備
【ペストマスク風の仮面】暗闇でも視界を確保出来るように赤外線スコープ機能がある他、物の距離を正確に図る機能や両眼を懐中電灯の様に光らせる機能もあり、割と多彩な仮面ではあるが機能を切り替えるには目元のダイヤルを回す必要がある。曰くこのレトロ感が良いのだとか。
【機械腕】指先に鋭い爪、手首から肘にかけて仕込み刃、突然の凶刃でも防ぐ事の出来る手甲を主な機能としている。見た目は黒光りする重厚感溢れた無骨かつゴチャゴチャとした如何にもスチームパンクな造形。
【杖】深紫の宝珠から鷹の翼が伸びたデザインのグリップ。全体的に高級感のある装飾を施された杖は、翼は金色ではあるが杖の先端に行くに連れて黒くなって行く。仕込み銃としての機能が備わっている。
【変声機チョーカー】濁声を作る為のチョーカー。主に仮面を装備している時に使用。また、このチョーカーのボタン一つ押せば2秒と経たず仮面、機械腕、杖、マントにタキシードとまるで変身ヒーローさながらに王族スタイルにフル装備される。逆もまた然り。
備考
一人称「私」、二人称「君」が基本だが割とその場の雰囲気で変わる。身分を偽る時は「ハリー」と愛称を名乗っている。イメージＣＶは斉.藤.壮.馬さん。イメージカラーはアイボリー。変声機による濁声は『』で表現されている。好物はお菓子、特にドーナツが彼の最近のお気に入り。
親族はみな模範的な王国寄りの考え方を持つ人間であり、ハロルドも類に漏れずそれが世間の常識であると言う認識で育てられた。幼いながらも生物学的に同じ人間でありながら格差がある事を純粋に疑問を抱きつつ、食べ物を食べてペットを愛玩する事と然程の違いが無いものだと言う事で腑に落としていた。しかしそれでも抑え切れない好奇心（今思えば動物園に行ってみたい子供の様な気持ちだったかも知れない）から彼は庶民の生活を視るべく勝手に家を抜け出した。
城下町から貧民街へ歩いて移動している間に出会う様々な人間。食べ物もろくになくて痩せ細った同い年の子供や、路地裏で野たれ死んでいる老人。それらに目もくれず、自分の事で精一杯な人間達。普段の自分の生活とはかけ離れたその光景は、彼の心を僅かに揺らした。揺らして、揺らめいて、真ん中の辺りにぽっかりと穴が空いた。これが"同じ人間"なのかと。
その瞬間、ハロルドを凶刃が襲った。金目の物を持っていそうだったからか、それともハロルドが王族である事を知っての犯行か。今となっては知る由も無いが、そこにはやせ細りながらもギラついた血眼で睨み付ける男がいた。男が手に持つ錆びたナイフには鮮やかな赤のペンキが塗られているのかと思い、そして顔を伝う生温い感触を覚えたと同時に視界がブラックアウト。目が覚めた時には自室にいて、顔は包帯で大袈裟な程に巻かれ、傍らでは母と弟妹が泣きながら付き添っていた。
ハロルドの行方が分からずすぐに捜索隊を出動させ、すんでのところで命を救われたらしい。襲って来た男はその場で殺処分したと聞かされた。ハロルドの左目は視力の殆どを失っていた。本人としては「迂闊な行動を取ったにも関わらずこうして命が無事だっただけでもありがたいことだ」と割と納得している。それでも痛々しい傷が残った事を心苦しく思う母を気遣い、彼は仮面を被る事を決めた。家族を悲しませない為に。この経験と浅はかな思考を忘却しない為に。自分が王族であると言う自覚を刻む為に。その後の彼はより一層、両親から洗脳にも近い形で王族としての振る舞いと護身術を倣い、模索し、模倣し、研鑽した。
時は流れて成長した彼は今一度護衛も着けず、素顔であの事件があった町に訪れた。気まぐれにも近い懐古からの行動だが今では自衛の手段を幾つか持っている為そこまで危険は無かった。其れよりもあの事件の衝撃でさえ忘れさせない心の揺れが未だに彼の中に引っかかりを与え、確かめずには居られなかった。そして民と交流を深めて行く内に、己が人間として間違っている事に気付いて行く。
けれど彼は王族であり、最早覆せない程に心は歪んで手は穢れていた。理解は出来ても飲み込む事が出来ない。後戻りが出来ない。八方塞がりな感情が彼の心を蝕んでいく。そのうちに、この重圧を仮面へ押しつけるようになった。そして自分ではどうする事も出来ないが反逆者達がこの国を転覆してくれたならば、と言う思想が澱の様に心の底に溜まり始めた。
募集
�…沼阿凌同丗皸�様（〆）：王国側の人間で唯一、ハロルドの素顔と精神的破綻を知る人物であり彼がお忍びで庶民を視察している事を黙認してくれる理解者、と言う設定だと嬉しいです。細かいニュアンスは話し合えたらと思います！
�⊃畔�を偽った状態での知り合いの反逆軍様（若干名）：素顔のハロルドと知り合った反逆軍のお方。ハロルド自身諜報のつもりはなく、意図せず友好を交わしてしまい王族としての葛藤など描けたらなあ、と！
��ハロルドの動向に疑いを持つ王国側の人間（若干名）：素顔も地声も晒さない彼を、王族でありながらも訝しく思い探りを入れて来る身内、部下、等など。駆け引きなんかを楽しめたらと思ってます！
追記・変化・人間関係・ET CETERA
直属の親衛隊員→フレデリカ・ガルシア様
ハロルドの動向に疑いを持つ王国側の人間→フレイジア・ザーバスノット様
身分を偽った状態での知り合いの反逆軍→スレイ様
コメントをかく